国民年金・障害年金の創設当時の資料

 ごあいさつ

 平成20年2月事務所創設以来、障害年金手続き代行相談、審査請求の代理人など主な業務として行ってきました。

 令和2年1月から障害年金請求研究所を創設しました。(旧名称:障害年金請求オブィス)

創設しました理由は、過去の障害年金支給事例を参考にして、法の目的に添って障害年金の受給を目指し、障害者の生活の安定と福祉の向上を図ることです。

そのために、従来の障害年金手続き代行業務と合わせて、障害年金が支給されたケース、支給されなかったケースを研究し請求手続き代行に役立てたいと考えています

不支給、支給の参考事例がありましたらご連絡いただければ幸いです。

                                                                                      代表 西川好和


当所には次の書籍を保存しています。閲覧を希望される方はご連絡ください。

①「国民年金法の解説 』    厚生省年金局長  小山進次郎著 

               発行所:㈱時事通信社

                  (東京都千代田区日比谷公園2)

               発行日:昭和34年10月10日第一刷

                   昭和35年9月1日第四刷

②「厚生年金保険法解説」   厚生省年金局年金課

               社会保険庁年金保険部厚生年金保険課 編 

               発行所:社会保険法規研究会

                  (東京都中央区銀座東8ノ4)

               発行日:昭和41年4月20日

③「国民年金障害等級の認定指針」 監修:社会保険庁年金保険部

                 発行所:㈱厚生出版社

                   (東京都新宿区三栄町16)

                 発行日:昭和43年3月28日

④「国民年金基本通知集」   発行:厚生出版社

                 (東京都新宿区三栄町18諸山ビル)

               発行日:昭和50年7月初版発行

                   平成15年3月増補改訂新版発行


⑤「厚生年金保険関係通達集」 監修:厚生省年金局社会保険庁

               発行所:(社)全国社会保険協会連合会

                  (東京都品川区西五反田2-10-24)

               発行日:昭和55年3月1日初版発行

                   昭和62年3月20日改定3版発行


⑥「国民年金・厚生年金保険  発行:厚生出版社

  障害認定基準の説明       (東京都新宿区三栄町18森山ビル)

               発行日:昭和61年3月初版

                   平成14年3月増補改訂新版


⑦「裁決例による社会保険法』

一国民年金・厚生年金保険・健康保険一

               著者   加茂紀久男

               発行所 (㈱)民事法研究会

                   (東京都渋谷区笹塚2-18-3

                    エルカクエイ笹塚ビル5・6F)       

               発行日  平成19年7月31日第1刷


⑧「社会保険審査会裁決集」

            発行所:財団法人全国社会保険協会連合会

                  (平成3年度版〜平成14年度版)

                       東京都港区高輪3-22-12

            発行所:厚生省保険局(現:厚生労働省保険局)

                  (平成15年度版〜平成17年度版)

                       東京都千代田区霞が関1-2-2

⑨「国民年金法総覧」     監修 :社会保険庁年金保険部

               発行所:社会保険研究所

                   東京都千代田区内神田2-5-2信交会

                   昭和47年11月10日初版発行

                   昭和54年1月15日7版発行

 『厚生年金保険法総覧』   監修:社会保険庁厚生年金保険課

                   業務第一課・第二課

               発行所:社会保険研究所

                   東京都千代田区内神田2-5-2信交会

                   昭和41年3月25日初版発行

                   昭和56年1月15日10版発行


⑪運用通知

「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることが出来ない場合の取扱いについて」

               発出元:厚生労働省年金局事業管理課長

               (平成27年9月28日年管管発0928第6号)

               実施日:平成27年10月1日


⑫日本年金機構Q&A

「初診日を明らかにすることができる書類を添えることが出来ない場合の取扱いQ&A」    

               作成元:日本年金機構給付企画部

               作成日:平成27年9月

⑬日本年金機構事例集

「障害年金の初診日の認定に関する事例集」

               作成元:日本年金機構給付企画部

               作成日:平成27年9月

⑭運用通知

 「国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドライン」

               発出元:厚生労働省年金局

                  事業管理課長通知

                 (平成28年7月15日付)

               実施日:平成28年9月1日

(注)ガイドラインが作成された背景について

・障害基礎年金や障害厚生年金等の障害等級は、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」に基づいて認定されていますが、精神障害及び知的障害の認定において、地域によりその傾に違いが生じていることが確認されました。

 こうしたことを踏まえ、精神障害・知的障害の認定が当該障害認定基準に基づいて適正に行われ、地域差による不公平が生じないようにするため、厚生労働省に設置した「精神・知的障害にかかる障害認定の地域差に関する専門検討会」において、等級判定の標準的な考え方を示したガイドラインや適切な等級判定に必要な情報の充実を図るための方策について、議論がなされました。

 今般、当該専門家検討会の議論を踏まえて、精神障害及び知的障害の認定の地域差の改善に向けて対応するため、 『国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等を策定し、本年9月1日から実施することとしました。

                      (出所:厚生労働省の報道発表文から引用した。)

〇国民年金障害年金を受けるための認定指針を示した先生方の講演記録を掲載します。

 これは国民年金創設当時の厚生省の基本的な考え方を示しています。(西川好和)

〇講演記録の病名と受給要件は当時のものであり、現在用いられている病名、受給要件等は異なりますのでご了解ください。

 第4章国民年金の障害認定の講演記録集

           出所:「国民年金障害等級の認定指針」S43.3 28発行

           監修:社会保険庁年金保険部 発行所:厚生出版社 

   4 肢体不自由の障害認定の基本的な考え方 

 廃疾認定講習会(34年10月開催)における鉄道弘済会東京義肢研究センター所長神田正虎氏の講演記録

 障害等級表作成までのいきさつ

 昭和33年の6月に6名の国民年金障害等級委員が委満されまして、その中で整形外科関係は、東京券災病院の高橋先生(故人)、横浜大学の水町先生(故人)、東大整形外科(現在日大)の佐藤先生それに私が委嘱されたのでございます。 整形外科の医師として、この障害等級表の作成に関与いたしましたので、今日はこの整形外科関係、肢体不自由関係について色々と委員会で取り扱われたこと、定められたことを申し上げてみたいと思います。

 昨年の11月29日に第1回の会合を致しまして、国民年金に関する当局の計画あるいは原案の説明、委員会に対する要望を聞きました。そこで、国民年金の障害等級表の作成というものは、如何にして行わなければならないかということを知ったわけです。そして、この障害等級表を作りますのに参考になりましたのは、現在広く行われておりますところの厚生年金保険法の障害等級表、身体障害者福祉法のそれの考え方であります。そこで、こういうものを我々は一応基本的によく知っておく必要があると考えました。

 厚生年金保険法の障害年金は、相互扶助とか、あるいは賠償の意味を含んでおりますし、また労働能力の喪失とか低下、これに対する補償でありまして、またこれは、在職中の業務外のいろいろな障害に対して出されるということでございます。

 身体障害者福祉法の方は、障害者が社会経済活動に参与するために、障害者の更生を援助するということが目的となっておりますが、一方、この国民年金の場合には、どういうふうに行うかということでございますが、これは、日常生活の不自由さを主として考えて行きたいということでございました。

 それが、この国民年金の障害等級表を作ります場合に、厚生年金保険法の表を採るべきか、あるいは、身体障害者福祉法を採るべきか、あるいは、この両者の折衷案を採るべきかが問題になり、あるいはまた,、全然新しい等級表ができましたときに、従来の他の障害等級の判定に差し支えがないだろうかということもいろいろ考慮されました。

 この新しい表を作る場合に、この表に包含されるところの障害の種類、範囲、拠出年金と無拠出年金の限界をどこで引くか、官、ろう、あ、肢体不自由等こういう各種障害間の障害認定の均衡、それから身体障害者団体その他の障害年金に対する意見や希望がどうであるかということもよく聞き、かつ、そのようなことを一応理解しておきまして、専門の医師として立派な国民年金の障害等級表を作りたいという考えで進んだのであります。数次の会合を重ねてでき上ったものが皆様のお手元にあります表〈注制度発足時の法別表>であります。

 障害のとらえ方

 今回の場合は、肢体不自由を主といたしまして、内科的なものは判定が非常に難かしいので今度は考えないで将来の問題にする。しかし、内科疾患で非常に長い間ペッドに寝ていたために身体の能力がないということがありますが、これは、まだ回復していないのであり、器質的にはっきりした永統性の機能障害、いわゆる肢体不自由を残す場合にはじめて国民年金法の障害年金の対象になるということでございますく注その後の改正により、いわゆる治らないものが国民年金の対象にとりこまれて、肢体不自由の場合でも初診日から3年目で、主治医が動いてはいけないと判断されるものも対象とされるようになっている。〉。

 また、本人が持っております現在の機能障害が、この年金の障害等級の表に該当する程度であり、しかも、それが永続する場合〈注昭和39年の法改正の結果、初診日から3年目以前でも>には、これを取り上げるという意見であります。

 それから、医学的に見ますと、本人の機能障害というものは、ある治療を加えますと、すなわち、更生医療を加えますと、その障害から脱却することができると考えられるケースが多分にあると思いますが、これはその対象が非常に多く、必ずしも身障法の更生医療をそのまま全部が受けられるわけでもありませんし、全身症状、年齢的問題、経済的問題、あるいは居住地の問題、あるいは職業の問題等いろいろありまして、必ずしもその障害を更生医療その他によって解決し、障害をなくしてしまうというわけにはいかないので、そのまま現況のままで判定を行い、もしも更生医療等を行って、その障害から脱却できたならばその時に再診をするという考え方がもたれました。

 また、判定の時期を何時にするか、いわゆる症状固定という言葉がよく用いられるわけでありますが、その判定をする時期を症状が固定したと判定するのは何時にするかと申しますと、例えば、脳避血による半身不随のようなものは、なかなか長くかかるのでありまして、少なくとも発病後6カ月以上経ってから判定をやってゆくべきだという意見でございますく注判定の時期は、昭和39年の法改正により、治らないものは初診日から3年目となり、症状固定を判断するものとしては、初診日から3年以内に症状固定として認定する場合に改められている。なお、切断のときは、創面治ゆのときではなく切断したとき(厚生年金保険と違うところである。)とされている〉。

 この障害等級表の特に肢体不自由関係を御覧いただきますと、両側の障害というものを非常に高く見まして、一側のものは比較的軽く見てあるわけですが、これは、御存じのように、手の場合で申しますと、一側の切断あるいは一側の機能障害の場合には、残っている健側の機能、すなわち代償機能が非常に高度に発現いたしまして、文献によりますと、一上肢の切断の場合には、日常生活においては、健肢が大体80%まで代用できるものだといわれております。ただ、一上肢プラスー上肢の機能障害では、この両上肢は代償機能が出にくいわけでありまして、両上肢の場合にはその能力損傷の程度が高くなるという具合に考えて非常にこれを重く見たということであります。

 1級の場合

  次に、この表に従って申し上げますと、「両上肢の機能に著しい障害を有するもの」という言葉がございますが、詳しいことは後程係官から説明があると思いますが、委員会の考え方といたしましては、両上肢の著しい障害を有するものは、どういうものであるかという根本的な基礎的な考えでございますが、それは、上肢の機能に著しい障害を有するものとは、上が存在していても上肢のすべての指を欠くものとほとんど同程度またはそれ以上に上肢の機能が障害されているものをいいます。たとえば、指では、かろうじて物を掴めるが、肘関節を自動的に直角まで屈曲し得ず、同時に上腕の挙上がほとんどできないものなどがこれに該当するということであります。

しかし、肩関節、肘関節、手関節などの良肢位強直で指の機能障害を伴わないものは該当しないという意見であります。

 次に「両上肢のすべての指を欠くもの」というのがありますが、この両上肢のすべての指を欠くものというものの中には、指以上の手関節、肘関節あるいは肩関節の切断も含まれております。表の中にいう切断部位が最低の線であります。

 身障法によりますと、切断の分類につきましては、いろいろ、義肢、装具の効果というものを多分に予測した、非常に進歩した考え方でございますが、現在の状態では、全国至るところで非常に進歩した優秀な義肢がすぐさま手に入るとも考えられません。また、この義肢というものは御存知のように、その義肢の使用訓練に習熱したかどうかによって能率が非常に違うのでございます。

 また年齢的な問題、あるいは体力的な問題、あるいは切断端の問題等によりまして、またその義肢をつけるということを前提としても必ずしもその切断の高さによって高い能力が得られるとはかぎらないのでございまして、この切断の場合には、義肢なしの状態で能力を評価すべきではないかということでございます。

 厚生年金の障害等級では、両上肢のすべての指を欠くものというものは、あまり明確にされていないのでありますが、手の機能というものは、物の把握ということが大部分の機能でございます。勿論その切断部位がだんだん上方に上って行くに従いまして、その他の能力の損傷が更に加わってきますが、しかし、大部分の上肢の機能というものは、手の把握あるいは摘むとか、こういう能力で、この把握ということができないと、これは手としての機能がないのだ、という考えから「すべての指を欠くもの」という項がもうけられました。したがって、この両上肢すべての指の機能を欠くものとは、手の切断と同程度と考えるべきだという意見で取り上げられたのでございます。

 両上肢のすべての指を欠くものとは、これは、掌指関節の切断が一応考えられますが、しかし、この第一指骨基部の切断で実用長0の切断は、あってもなきに等しいのでございます。手の利用性、指の利用性ということから考えまして、このすべての指を欠くものと申しますのは、指骨基節の基部から切断している、いわゆる実用性のない状態での全指の切断ということを意味するというふうに解釈していただきたいと思います。

 その次の「両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの」という項目でございますが、これは、指というものは存在しましても、把握ができない、あるいは摘むことができない、たとえば全指が癒痕で変形拘縮があるとか、あるいは癒痕の中に埋没されているというふうな場合、手の機能としての役目を果さないというふうなものは、やはり、この手の切断に等しい、あるいは準ずるものとしてここに取り上げられたのでございます。この辺は、身障法とかあるいは厚生年金の場合と違うのではないかと思います。

 それから、この「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」という項目でございますが、これは、下肢は存在いたしましても、足関節以上で切断したものと同等の機能障害を持っている、あるいはそれ以上の障害を有すると考えられるのでございまして、たとえば、腎筋以下の高度の麻陣によりまして、恵肢に体重をかけることができない、あるいは股関節の不良肢位の強直によって起立ができないというようなこと、あるいはこの下肢の短縮が健側の四分の一、または、それ以上の長さの短縮があるというような場合には、これはとにかく下肢の機能を果し得ない状態にあるというように見て、この項に該当すると考えられます。

 勿論、膝関節の高度の不良肢位強直の場合、拘縮の場合でもこれを更生医療をいたしますと、十分体重を支えて歩けるようになりますが、歩けない状態の場合には、これはこの項目に該当します。しかし、歩けるようになりましたならば、これが該当しなくなるというのでございまして、そのような場合再診が必要となって来るのでございます。

 それからその次の「両下肢を足関節以上で欠くもの」という項目でございますが、これもいわゆる股関節の離断、あるいは大腿切断、膝関節離断、下腿切断あるいは足関節の離断すなわち足関節以上で両足を切断したというものはこれに該当いたします。

 身障法では大腿の二分の一以上とか、あるいは下腿の二分の一以上あるいは以下でこの等級を区別しておりますが、上肢の場合に申しましたように必ずしる技術的に、断端の状態で義肢の理想的なものが得られない現状であります。切断肢が長ければ長い程この能率が高いということにはなっておりますが、断端の長すぎるものは、短いものと同様非常に義肢の工作が難かしい、非常に破損しやすいなど種々問題がございまして、これはむしろその能率の点から申しますと、その二分の一とかいうふうな分け方でなくて、解剖学的に関節の部分での分類が妥当ではなかろうかという意見から法別表の様な書きかたになりました。足関節以上の切断は必ず義足を用いないと立てない障害者であるということでございます。それから次の項に関連するのでございますが、リスフランとかショバールとかあるいはピロゴフという切断は、これは一般的には義足はなくても、はだしで体重加重起立ができるというように考えられております。これは一般的な考え方でございますが、ただその原因が凍傷だとか傑断だとか色々問題が多うございまして、断端末が全般的に療痕で包まれて潰癌があったり癒着して移動性がなく、しかもこの骨端が、特にショパールの切断の場合には、睡骨が尖足位となり、非常な痛みを訴えて起立できない、こういうような非常に特異の症状で体重がかけられないという場合には、これが両足の場合には実際的には両下肢を足関節以上で欠くものと同じように考えられますので、それはケースバイ・ケースで特別な詮議をされてこれはお取り上げになったらいいだろうと思います。一般的には裸足歩行や裸足起立ができるものとできないものという線がここでは該当、非該当のさかいとしてひかれると思います。

 それから次の「体幹の機能に坐っていることができない程度又は立ち上ることができない程度の障害を有するもの」ということでございますが、実際には、この体幹だけの機能障害というものは非常に少ないのでございまして、これは四肢の機能障害と合併して起っているものが非常に多いのでございます。この両者を勘案して判定していただきたいと思います。

 それで坐っていることができないというのは、腰かけ、正座、あぐら、よこすわりがいずれもできないものをいいます。立ち上がるということができないというのは、これは座位又は臥位から自ガのみでは立ち上がれず、他人又は柱、杖、その他の響物の介助によってはじめて可能なものをいうのでございます。歩くことができないもののことでございますが、歩くことは屋外歩行ができない程度のものに考えていきたいということでございます。

 2級の場合

  それから2級の表の方にまいりまして、6に「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの」というのがあります。「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの」というものがございますが、これは一般的なもの、今までのものと同じものだと思います。

 「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」或いは「一上肢のすべての指を欠くもの」、「一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの」これ等は1級のものの半分であるということで2級になったわけでございます。

 その次に「両下肢のすべての指を欠くもの」というのがございますが、この項目には両下肢のすべての指を欠くものとリスフランとショパール致いはピロゴフというようなものは、これはこの項目に実際的には入ってくるわけでございます。

 その次の「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」という項目でございますが、これも先程の1級の解説からおしてご想像できると思います。

 次の「一下肢を足関節以上で欠くもの」これも同様でございます。「体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの」というのがございますが、これは先程申しましたように歩くことができないとは、屋外歩行が杖なしではできない程度をいうものでございます。この文章の中に表現方法として全くというのがございません。全廃ということがございませんが、著しいという言葉がありまして、この著しいというような非常に不確定な表現は、そのうけとりかたによって、いろいろにとられるわけでありますが、これはできるだけ沢山の症例をだして種々均衡性、すなわち、どなたがごらんになっても同じような判定ができるようにしていただきたいという委員会の意向でございました。

 それからいろいろの判定をしていただく場合に、これはこの審査をされる方によりましていろいろな見方があろうかと思いますが、この認定は各個人の権利に関することが非常に多いのでございまして、できるだけ正確にやっていただきたいということであります。障害の本質成いは障害発生後の年数とか、問題によりましては、ある場合にはこの障害が1級でありましょうと、あるいは2級でありましょうと、長い間に変化がくると思われます。あるものは軽くなるし、あるものは障害がより重度になってくると、そこで障害によっては再診をする必要が生じます。

 それから、障害者の団体あるいはそういう方面からの要望は大体ほとんどでき上った等級表と同じようなものでありますが、ただ、どうかしますとある部面では今度の新しい等級表の方がむしろ有利になったりしております。それはたとえばすべての指の著しい障害というものは有利になっていると思いますが、なかには、一上肢の肩の離断あるいは一下肢の股関節離断というものを、1級に取上げてくれというような要望もあったようでありますが、それは先程申し上げましたように、一上肢あるいは一下肢が代償機能というような種々の面から考えると、むしろこれは2級の方が当然ではなかろうかというのが我々の結論であります。

 こういうようにして見ますと、今度の新しい等級表には、身障法の1級、2級が大体1級になっておりますし、それから厚生年金の障害等級では、これがほとんど1級のものがそのまま残っております。

 今度の新しい国民年金の2級には、身障法の2級以下3級、4級、こういうところまで入っているようでございます。

 厚生年金では2級あるいは3級の一部が入っているかと思っております。このようにしてできました新しい障害等級表は現在のところでは許された段階では妥当なものではなかろうかというのが、委員の方々のご意見でありました。

 非常に雑然と申し上げたのでございますが、一応肢体不自由関係のことにつきまして、委員会で考えられた意見あるいは決定事項につきまして申しのべたつもりです。

 これからの障害給付

  近年、社会保障制度の発達にともない、先進各国では、障害年金は、一般医療、リハビリテーション、老齢年金と個々別々の制度ではなく、社会保障の一環としてどれかが与えられる傾向が強くなってきております。

 身体障害者には、まずリハビリテーションを与え、リハビリテーションに失敗し、または見込のない人、あるいは効果のうすい人に対し、はじめて年金を支給するという思想です。

 たとえば、切断者であっても、適職において働く可能性があれば、義肢や義肢による訓練や、適職での職業訓練がリハビリテーションとして保険制度のもとで与えられ、働くことが困難になったときは直ちに障害年金が与えられるよう切替えられています。

 WHO(世界保健機構)の医学的リハビリテーション専門家会議では、ImpairmentとDisabilityとをはっきり区別せよといっております。

 インペアメント(損傷または損減)とは、日常生活の諸要求を処して行く適応性が減退すると医学的に診断された身体的欠陥が個人に存在することで、一時性のものも永続性のものもあり、ディスアビリティー(身体障害)とは、有利な職業的見地から、患者の能力減退度を複合的に評価したもので、身体障害者とは、身体的機能の欠損、低下度ではなく、職業能力の低下した人を定義し、その職業能力の低下度に対し年金を支給する制度もあります。前述のように、身体に障害はあっても、医療、リハビリテーション、補装具で稼動能力を高め、選択的職業紹介、適切な職業用具の支給を社会保障の他の面でカバーしようとする行き方です。

障害年金受給から見た精神障害の概念

              教 育 講 演 6  

 平成6年5月27日(B会場:9:00〜10:00)

司会 樋田 精一(国立精神・神経センター武蔵病院)

      障害年金受給者から見た精神障害の概念

          金澤 彰(愛媛大学神経精神医学教室)

                 出所:精神経誌(1994)96巻9号   

     はじめに

 精神障害者の社会復帰, 社会参加のために, 障害年金が大きな役割を果たしているが, わが国の公的年金制度, 特に障害年金制度にはたくさんの問題がある。 年金制度の度重なる改訂と, 精神医学の学説が矛盾を拡大し, 精神障害者が障害年金を受給できない, いわゆる無年金の状態におかれる危険も存在する.  障害年金制度は実に複雑であるが, 教育講演の機会に,できるだけ分かりやすく解説した。 表題を「障害年金受給から見た精神障害の概念」としたが,これにとらわれず, どのようにすれば障害年金を受給できるかという点に絞って話を進める。

  なお,全家連年金問題研究会で編集した「精神障害者の障害年金の請求の仕方と解説」をテキストにした。 (1)

表新1.jpg

わが国の公的年金制度の特徴 わが国の障害年金制度は社会保険方式を採用している. わが国の国民年金制度は,法制定に先だって昭 和33年に社会保障制度審議会が行った答申「国民年金制度に関する基本方策について」 においては、被保険者が保険料を納付する拠出制と保険料を納付しない無拠出制を組み合わせた制度とする よう提言しており, 無年金者は生じない構造にな っていたが,国の財政負担が増大することを恐れ た政府が、 社会的扶養の思想を後退させて, 保険 料を納付しない被保険者には年金を支給しないと う, 「保険」主義を徹底させることになった(2) 

表2.png

その結果, 国民皆年金といわれる時代にはいったにも関わらず, 20歳を過ぎて年金保険料を納付していない場合は,障害認定日に法別表に定める程度の障害があると認められても、 初診日に納付 要件がないという理由で, 障害年金を受給できな い状況に置かれることになった

 しかも、今述べた初診日, 障害認定日, 障害の程度、保険料の納付要件などの用語がたいへん難しく, 障害年金診断書を作成する医師であっても, 正確に理解している人は少ないのが現状である。 それは, 厚生省, 社会保険庁などの当該官庁の国 民に対する教育不足と同時に, 公的年金の制度運用に国民を参加させるような民主的制度運用を怠った結果であると思われる

 しかし、ここでは公的年金制度の問題点をこれ以上触れる時間はない。 社会保険方式である公的 年金制度が,「保険」主義を徹底させることによって,保険料の納付要件がないといった理由で無年金障害者をつくり出す構造を持っていることを指摘するにとどめる.

     障害年金を受給できる条件 

障害年金を受給するための条件を, 表1に示し た。

 I. 無拠出年金を受ける場合 20歳以前に初診日がある障害者は, 保険料を 納付していなくても, 20歳を過ぎると障害年金 を受けることができる. 精神遅滞や小児自閉症では,20歳以前に障害 が見つかっていて, 初診日も20歳以前にあるから, 20歳になった日から3ヵ月以内に障害年金 を請求すると年金を受給できる.なお, 知的障害, 発達障害の場合,医師の診察を受けたことがなく ても、障害年金を受けることができる。
精神分裂病を初め, 思春期、青年期に発症する 精神病によって障害者になった場合も, 20歳以 前に初診日があれば, 障害年金を受けることがで きる.
 もちろん,障害の状態が法別表に定められた程 度であることが条件になる.
  II. 拠出制年金を受ける場合 

 20歳を過ぎた日本人は,国民年金を初め何ら かの公的年金に加入していなければならない。そ して, 20歳以後に発症し, 20歳以後に初診日が ある傷病によって障害者になった場合, 初診日に公的年金に加入しており,かつ一定の保険料を納 付している, すなわち保険料の納付要件を満たし ている必要がある。
 この場合も、障害の状態が法別表に定められた 程度であることが条件になる。

 障害認定日とは,障害の程度を評価し,障害基礎年金などを支給するか否か, 支給するとすればどの等級の年金かを認定する日である。年金制度においては,障害認定日は初診日から1年6ヵ月目と定めている。障害認定日に障害の程度が法別表に定める程度に達していると,その日に請求するので、「本来請求」と名づけ、障害認定日に障害が重くなく,後に法別表に定める程度に重くなった場合、「事後重症」と称している。

 障害が固定している場合, たとえば精神遅滞や 自閉症では、初診日から1年6ヵ月の時点を障害認定日として年金を請求する。 また,その日が 20歳以前に当たる場合は, 20歳の誕生日を障害が固定した日として請求する。

 精神分裂病のように、障害が固定しない,あるいは障害が変動を続けている疾病の場合でも,初診日から1年6ヵ月目を障害認定日として請求する. 

 また,脳血管性痴呆や植物状態などの場合,初 診日から1年6ヵ月を経過する前に障害が固定し, 回復の見込みがないと判断されれば、初診日から 6ヵ月を経過すれば障害年金を請求できる。その 日が障害認定日になる. 

 障害の程度について, 国民年金には1級と2級, 厚生年金には1級 2級, 3級がある。 1級とは, 障害が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめ る程度, すなわち他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度の障害 であり,2級とは,日常生活に著しい制限を受けるか、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度, すなわち, 他人の助けを借りる必要はないが,日常生活が極めて困難で,労働により 収入を得ることができない程度のものとされてる。 

 3級とは, 労働が著しい制限を受けるか, 労働 に著しい制限を加えることを必要とする程度のものと定められている。 

 精神障害における疾患別の障害の状態はテキス ト(文献1) 153ページに示してある。 以上、現行の障害年金制度を大まかに説明したが、これから演者の主張も入れて障害年金診断書の書き方と障害評価について述べる。

障害年金診断書の書き方
 診断書に従って説明する。
 まず,この診断書は障害年金を受給するための 診断書であることを心得て, 本人や家族の話をよく聞き、日常生活における障害を総合的に表現す あるように努める。 けっして,精神症状を羅列した 「医学的な」 診断書を書くのではなく, 精神科医 ではない、ごく普通の事務員が読んでも,障害が あって生活できない状態だと納得するような診断書を書く.

障害の原因となった傷病名
 障害の原因となった傷病名は,精神分裂病,躁 うつ病,非定型精神病、てんかん,中毒精神病, 器質精神病,精神薄弱の7種類である。 神経症, 性格異常は対象とならない。 心因反応 も対象にならない。 心因がなくなると、症状も障 害も消退するという概念だからであろう。ただし, 社会保険庁の解釈例に,重症神経症は障害年金の 対象となる可能性を指摘したものもあるから, 初めから障害年金は受けられないと考えなくともよい。
  性格異常に関していえば, 境界性人格障害という傷病名で障害年金を請求する場合, 対象と認定するか否かは認定医員の判断に任されているといってよい。 私は, 境界性人格障害では障害年金の対象とはなり難いと考えている。 偽神経症性分裂 病という意味の境界例であれば対象としてもよいかと思うが, そういう診断名を使うなら, いっそ精神分裂病とすれば良いと思う。
  覚醒剤精神病は対象にならない。覚醒剤の使用 は非合法であるからという理由からであり, 演者 もある時期まで覚醒剤は対象外と考えていた。 しかし, 覚醒剤を使用していた時期に精神症状を体験していたものの,その後治療を受けないでも症状が消失し, 数年後幻覚妄想状態になった分裂病患者の事例を診て, 現行の認定に疑問を感じている。覚醒剤を使用していたとしても,それとは別に精神分裂病が発症していることが明確であれば, 精神分裂病として障害年金の対象になるわけだから初めから覚醒剤使用を対象外と考えない方がよいと思う。
 ここで, 病名告知の問題を取り上げておきたい。近年, 分裂病という病名を告知する精神科医が増えているとは思われるが, まだまだはっきり病名を告げない医師が多いようである. そのため,患者や家族が障害年金を受給できるのかどうか分からないという相談もある。 あるいは, 心因反応と告げていて, 初診時の診断が分裂病でなかったという理由で年金を受給できないと判断されそうになった事例もある。 本来, 患者に正しく病名を告げ, 協力を得ながら進めねば, 治療も社会復帰もできないはずである。早い時期に病名を告知して, 治療を進めるのがよいと思う。
 初めて医師の診断を受けた日
 いわゆる初診日である。この日が20歳以前で あれば,無拠出年金を受給することになる。 診断 書作成医が自分で診たか, 作成医の勤務する病院 で診て診療録に記載がある場合,その日付けを記入して, 「診療録で確認」 とする。 その場合, 国民年金の障害基礎年金を請求するのであれば,改めて受診状況等証明書を提出する必要はない。 厚生年金の場合は受診状況等証明書を提出する。
 初診日が本人または家族の申し立てによる場合 は,受診状況等証明書を提出する。
「傷病が治ったかどうか」。 この欄に障害認定日 を記入する。

 現病歴
「発病から現在までの病歴及び治療の経過、 内 容, 就学・就労状況等, 期間, その他参考となる 事項」とあるが,現病歴と治療歴を書く。 作業所 等でのリハビリもこの欄に書く。

 初診時所見
この欄には、診断書を作成している医師の属し ている医療機関での初診時所見を書く. 幻聴, 妄 想などと精神症状を羅列するだけでなく, 表情,態度, 精神症状などを含めて, 患者の状態がよく分かるように記載する. 
  発育・養育歴等
 ここでは,職歴の欄の記入に当たって注意が必 要。作業所などへの通所はリハビリの一環である から,ここには記載しない。 あくまでも、 一般就労を書く. 

 障害の状態
ここから下,障害の状態の記載がこの診断書で最も重要な部分である。 単に精神症状を書くのではなく, 障害の状態を記載するように。 ア「現在の状態像」の欄では,該当する項目を全部選ぶことはもちろんであるが, 7の「分裂病等残遺状 態」を活用して障害の状態を表現することが必要である。 その際, 「分裂病等」にこだわらず,非定型精神病や躁うつ病, その他の精神病であっても,自閉,感情鈍麻, 意欲減退が認められれば, その項目を選ぶ。 また, 8 「その他」には、身だしなみに気を配らない, 疲れやすくて就労できな い, 対人関係を保ちにくいなど, 生活上の障害とみなされる状況を書く。 その右のイ欄には,具体的な説明を記載する.
 ウの「日常生活状況」の欄は, <平均的な生活 環境における状態> を記載するように求められている.つまり,入院患者であっても, 家庭生活な り社会生活を送っている場合,どのような状況にあるかを推測して記入する。 入院中は院内で対人関係は保たれていても,退院した場合はうまく人づき合いができない, 日常生活にも援助が必要だと推測されるならば、その項目を選ぶ、食事、用便など, 自立できているか, 援助が必要か、まったくできないか,いずれかを選ぶが, すべて自立できている場合は障害がないと判定されてもしかたがない。いくつかの項目に援助が必要, あるいはできないという判定があるような選択をすること。
 
 日常生活能力の程度では, <(1) 精神症状は認め 4 あるが,社会生活は普通にできる〉を選ぶと障害年金を受給できないことがある。
  エ, オ, それぞれ必要な所見を記入する.
 平成4年4月に診断書の様式が改訂され, 介助 を要するという表現が, 援助を要すると改められ、 本学会の社会復帰問題委員会年金問題小委員長名で 「精神の障害用障害年金診断書の様式改訂につ いて」と題する会告が本誌に掲載された3) その趣旨を活かすとともに, 新しい様式の診断書を使ってほしい。

 日常生活活動能力または労働能力
 この欄は,国民年金に加入している人の場合は 日常生活能力を書き, 厚生年金の場合には労働能力を書く。 この診断書は障害があるということを 証明しようとするものであるから, 「条件があれば労働可能」と記入するより、「条件を整えなければ労働不能」 とする方が障害が明確になる.
 くどいようだが, 障害を総合的に表現して、年金を受けられるような診断書を書く.

  精神の障害を評価するに当たっての問題点
 障害受容に時間がかかること
 わが国の社会保険制度では, 障害者本人が請求 する請求主義をとっている。 精神障害者が障害年 金を受けようと決心して請求するまでには, かなりの年数がかかる. 初診日から1年6ヵ月を経過した障害認定日に年金を請求する人は少ない。 ほとんどの障害者は5年、10年あるいは15年以上経ってから, 年金を請求している。 表2に全家連 が1992年に行った調査の結果を示したが, 初診日から5年までに請求した人は26%に過ぎず, 10年以上を経過して請求した人が44%にものぼる。これは障害年金の制度を知らなかっただけではなく、自らの障害を受容できないことの現れと見るべきである。 患者自身障害を受容できないだけではなく, 家族もまた障害を受容するのに時 間がかかることを意味している。

  精神障害者の年金は本来請求ではなく、多くは事後重症の形で支給されている.
 そこで,年金を障害認定日に遡って請求する遡及請求が問題になる。 通常は請求時の現症によって等級が認定されるが, その障害の状態が障害認 定日にまで遡って存在していたことが証明される場合,障害年金を遡って請求できる, いわゆる遡及請求という制度がある。 その手続きは,障害認定日及び診断書作成日の診断書を提出すれば良いが,なかには遡及請求をしない場合にも2通の診断書を書かねばならないと間違えている医師がいある。 作成時の診断書だけでもその翌月から年金を支給される.
 会計法上5年間しか遡れないが, それでも5年自分の障害年金を合計すると数百万円にのぼること もあって、その扱いはおろそかにはできない。さて,障害の受容に時間がかかるため, 精神障害者が障害年金を受けようと思ったときには, す でに初診日を証明するカルテがないとか、医師が亡くなっていて初診日が明確にならない, そのために年金を受給できないことが起こる。

 精神分裂病の障害特性と障害年金の障害評価 

 精神の障害用の年金診断書で障害年金を受けている障害者は,精神分裂病と精神遅滞がほぼ40%ずつを占め, 残りを他の精神障害が分けあっている。 だから, 精神障害の障害年金といえば, ほとんど分裂病の障害をどう評価するかという問題に集約される.

 同時に、分裂病ほど現行制度での障害年金を受給しにくい障害はないともいえる。 まず, 分裂病は思春期あるいは青年期に発症する。 20歳前後に発症し, 20歳までに発症していても医療を受けていないために20歳以前に初診日がない, 20歳を少し越えて発症してもその頃は年金制度に加入していない, 加入していても保険料を納付していない。 こういう悪条件が重なりあうことが非常に起こり易い障害である。 さらに分裂病を発症するような状況の若者やその家族は,社会的な関心をもたず, 加入や保険料納付を行っていないことが多いと推定される。 平成3年 4月から学生も国民年金に強制加入することになったが, 分裂病を発症する若者たちの多くは,現在でもおそらく保険料を納付していないであろう。 発症の時期と年金制度に加入する時期がほぼ一致し、しかもその時期に加入せず, 保険料の納付もしない,そのために無年金障害者になるおそれがあることを第一に指摘しておく。 

 次に、分裂病の場合, 病識欠如が災いして, 障害年金を請求できないという事実がある. わが国の社会保障制度は請求主義の立場をとっていて、 本人が請求しない限り給付は行われない。ところが病識のない分裂病患者の場合, 自分で障害年金を請求することはあり得ない。 家族が気づいて請求しようとしても,本人が拒否すると請求できな かったり、本人に隠して請求して家族が年金を受け取っていることもある。 それが障害年金が障害 者自身のために使われない一因にもなっている。 

また,すでに障害年金を受給している分裂病の患者が社会保険事務所に年金受給を辞退する手続きをしたり, 有期認定の際, 診断書提出を行わないために支給されないまま3年が経過し, 失権する 場合も出てきている。一旦失権すると, 同一障害では年金を受給できなくなる.

 また, かろうじて病識を獲得している患者の場 合でも,自分は病気であるが障害者ではないと言い張る人たちもいる。そういう場合、障害年金を受給して社会参加しようと勧めてもなかなか承知してもらえないことがある。 病気が治れば障害者ではない, むしろ障害が残らないように治してほしいと希望する。 障害者の意思を尊重すべきであることは十分承知しているつもりだが, 病識欠如による受給拒否の場合は、受給権を守るのが診断書作成医や認定審査医員の役割であろう。



廃疾の程度の認定

2章 廃疾の程度の認定

10  精神障害の障害認定の基本的な考え方

 廃疾認定講習会(39年6月開催)における前東京都立梅ヶ丘病院副院長斉藤徳次郎氏の講演記録

精神障害認定の実際
 国民年金に内部障害、すなわち精神障害と、呼吸器障害を入れるか、どうかという案がでて、精神の方の検討を、笠松教授とわたくしが引き受け改正が実現した。その後も、やはり2人が中心となってまとめたのが、この認定基準である。
対象とする障害の程度
 まずどういう状態の精神障害を対象とするかというと、精神に、持続性がありまたは持続性があると思われる障害があり、自用を弁じられないもの、知能からいえば白痴級(1級該当)、つぎに精神に持続性または持続性と思われる障害があり、日常生活に制限が加えられるもの、その程度は知能からいえば、痴愚級(2級該当)と考えた。
対象としない三つの疾患
 それではどの疾患にも適用してよいかということであるが、精神病質神経症、精神薄弱はのぞかれた。すなわっち対象にしないということである。精神病質を年金の対象から除外することについては、異議のないところであろう。神経症も廃疾、症状の固定という点で、認定のむずかしさもあり、年金神経症というようなものまでも考えてのぞいた。
 つぎに精神薄弱であるが、これはいずれ取り入れるべきものではないかと思うが、今回は対象からはずされた。というのは精神薄弱を別途考究する等の案や、重度の精神薄弱児手当法〈注昭和41年法律第128号により特別児童扶養手当となった。>が予定されたりしていたからである。いずれにしても、精神薄弱は適当のときに入れる必要があると思う。〈注これら三つの疾患も昭和40年の法改正でとり入れられた。>
 とにかく精神病質、神経症、精神薄弱をのぞく、すべての精神障害を年金の対象とし、その障害が持続性であるか、または持続性があると思われるという性質のもので、白痴級、痴愚級の程度の者に年金を支給することに限定したのである。
認定の時期
 では、いつこの認定をするかということであるが、初診日から3年を経過した日を原則として認定日とされた。これは主として行政的立場の考えから定められたものであって、専門的な立場からいうとなお検討の余地は残されており、引き続き研究をしてゆきたいと思っている。これについては、厚生年金の例などがあるので、事務当局ではその線にならったと思われる。
 それはとにかく、症状が固定せずとも3年目に認定するわけであるが、2年目でもその状態が不可逆性であれば、認定して差し支えないこと、3年目でもその状態に変化の可能性があれば、1年さきをみこして4年目の状態で認定しても差し支えないというように、ある程度の幅をもたせてあることをつけ加えておきたい。
 つぎに精神衛生法や生活保護法の入院患者にみられる6ヵ月、3カ月等の期間をおいて、病状を審査して、その正確さをはかっている方法があることは、ご存知の通りであるが、この場合にもそのようにしたいということで、2年目ごとに診断書を提出することになっている。
 以上が対象となる疾患、その程度、認定日等であるが、ここでご注意申し上げたいことは、自用を弁じられない程度についてである。身体障害であれ、精神障害であれ同一等級のうちでは、その程度は同格であるから、身体障害の場合をご参考にして、辛からず甘からずご配慮ねがいたい。
各疾患別のあらまし
 つぎに各疾患別にいちおう、あらましをのべてみたい。
 内部障害として、年金の対象となる精神障害は、精神病質、神経症、精神簿弱の三つく注昭和40年の改正で年金の対象にとり入れられている。〉をのぞいた精神分裂病、そううつ病、非定型精神病、てんかん、中毒精神病、器賞質精神病である。精神分裂病については、廃疾認定基準では、高度の精神的欠陥があり、高度の人格崩壊、思考の障害、その他妄想、幻覚がありといった表現がされている。これらはこれをうらからみれば、便所に1人で行くことができない、食事もできない、すべて他人の手をへなければ生命の保持があぶないというようなことを、意味しているわけである。つまり非常に重い精神の障害であることをいっているわけである。つぎに或る程度までは自立できるが、常時目を離せない状態、これは精神衛生法でいう、社会に危険を及ぼすというものではなくて、生命保持のために誰かが常時目をはなせない状態、そういう状態を指しているわけである。これらはすべて1級の障害になる場合である。
 そううつ病の場合は、認定基準に書かれていることをいいかえると、精神の障害のために、自分の感情が昂揚しすぎたり抑制されたりするため、自分の生活を調節できなくなって、たえず、介護、指導を必要とするものである。
 非定型精神病というのは、症状経過はちがうが、終局的な廃疾の状態というものからみると、今まで述べた分裂病、そううつ病と甲乙ないものである。
 その次のてんかんであるが、これも非常にむずかしいと思うが、認定基準にみるようなものと、ご承知願いたい。
 さらに中毒精神病、器質精神病病などは、いずれも認定基準をみてもらうこととして、細かいことは省略したい。
 これで、いわゆる1級障害の自用を弁ずることができない程度のものについて、ご説明申し上げたわけである。
 次に2級障害は、これは1級よりその程度が軽くて、白痴級から痴愚級のところにくるものである。

診断書記載上の注意

 最後に診断書であるが、診断書の様式については、いろいろ考えてみたが、最後にこの様式に落ちついた。結局この診断書は、いわゆる純医学的な意味のもっとも正確な診断というか、かくかくの症状であるが故に、精神分裂病であるというふうなことももちろんであるが、それのみに限らないで、とくに日常生活に及ぼす影響に留意して、⑦欄の現症の精神所見欄<注規則の一部改正(昭和41年厚生省令第39号及び第40号)により、現在は⑧欄〉を記入していただきたい。
 この欄の内容が廃疾認定上の主要なファクターになるのであるから、普通なら幻覚があって、妄想があって云々となるが、こういう妄想があって常時食事もたべられないというふうなことで、日常生活に則した、直結した精神状態というものと結んで書いていただきたい。そのように書いていただいて、順次にそうした項目をおっていくと、たとえば風呂、食事、着物も1人では処理できないとか、あるいは食事ぐらいはだいたいできるが風呂が留守番だということは、ちょっとむずかしいというようなものが、当然でてくるようにしたいと思う。作成した方の立場としては、その辺で多年のご経験をいかしていただいて、1級、2級と自づと分けていただけるだろうと考えたわけである。
 その裏付として、⑥欄(2)発病以来の治療歴く注規則の一部改正(昭和41年厚生省令第39号及び第40号)により、現在はの欄)の治療年月、何々病院で、どういう診断で、どういう治療、その転帰ということをわかる範囲で書いていただく。①欄にかかれている食事も風呂も1人ではできないのは、前にこれだけの治療をしながらこれだけの症状が残っているんだと、なかには初診日から3年以内であるが、これでは固定したと認めても良いのではないかというふうな意味を加味してあるので、活用していただきたいと思う。
 それから⑥欄の発病以来の症状と経過も、できるだけくわしくお取りになっていただけばよいが、国民年金の場合は、労災や厚生年金の場合とちがって、非常にむずかしくなってくると思う。しかし、非常にむずかしいでは、いつになっても精神障害は年金に入れられないので、多少の困難さを承知でこぎつけたのであるから、委員の考えもくんでいただいて、出された診断書で判定していただきたい。
 これについて診断書を直接書かれる側の人のためというか、廃疾認定診断書の作成が困難なときには、ある一定の期間納得のいくまでご検討をねがうようなことも、必要な場合があることを考慮している。
 それから、この診断書は誰が書いたらよいかということになるが、精神鑑定医、精神鑑定医のいない場合には精神科医というふうに考えたのである。
 次にの欄(2)と(3)身体所見、臨床検査欄〈現行③欄3)(4)>であるが、廃疾認定上特に必要でないものは省略してもよい。つまり、精神所見の欄を解説するに必要なものだけといえる。
 なお、②の合併症の欄には、国民年金では精神と身体の両障害を合併して年金が支給される程度に至る場合があるので、精神障害に関係のない障害、たとえば既往の一上肢切断などの障害も記入していただきたい。

第2廃疾の程度の認定
く障害認定の基本的な考え方>
 廃疾認定講習会(40年5月開催)における厚生技官下河辺征平の講演記録
法別表のもつ意味
国民年金のうち障害年金というのは、かけ金をつみたてていた人が、障害者になったとき障害の程度に応じてでる年金ですが、これに対して、国民年金のうも障害福祉年金といえば、かけ金をつみたてないで、でる年金であります。これには主として障害を20歳前にもっていて、20歳になってからでるものと。国民年金制度ができた昭和34年11月1日において、すでに障害の状態にある人にでるもの。およびその後障害状態になったけれども、かけ金の納付要件をみたしていないために、きょ出制の年金はでないが、補完的な福祉年金はでるというばあいがあります。障害年金および障害福祉年金が、どの程度の障害のものにでるかと申しますと、国民年金法のなかにあります「別表」に相当する程度の障害のばあいにでるわけであります。そこで障害関係の年金に関しては、「別表」が、障害年金がでるかでないか、どれくらいでるかをきめる根本となるわけであります。いいかえますと、別表は障害に関しての年金をだす質と量をきめているわけであります。さらにいいかえれば障害年金が支給される対象と障害年金が支給される程度とをきめているわけであります。諸先生方、県の職員の方のなかには『国民年金内部障害認定事務の手引き』をおもちかと存じますので、それをみていただきますと、その第3頁に法律にあります別表のぬき書が書いてあります。これがすなわち、障害年金もしくは障害福祉年金がでるという質と量をきめている根本なのです。
別表が定める障害の「質」ということ
今、これをみますと、1級と2級ということになっています。そして1級のなかが、11号にわかれ2級のなかが17号にわかれています。この1級、2級の号数が、対象となる質すなわち種類の数であります。1級では1号に両眼の視力云々と書いてあります。視力障害という質を障害年金の対象としましょうというわけであります。これからわかりますように、決して、原病がトラホームだから対象とするとか白内障だから対象としないといっているわけではありまん。視力に障害のあるものを対象とする、といっているのであります。2号のなかが両耳の聴力損失という項目になっています。ここでも聴力損失という質の障害であれば年金を支払う対象にしましょうといっているのであります。
 そして量はそれに続いて書いてあります視力の和が0.04以下のもの、聴力障害が90デシベル以上のものということで示されるわけです。3号に目をうつしますと、両上肢の機能障害が年金の対象となり、それから4号は、両上肢をいわるる切断したものも対象にいたしましょう。ということになっているわけであります。5号がこんどは両上肢の指に何がしかの障害があれば対象とします。6,7号は両上肢の機能障害もしくは何がしかの切断、それはみな対象といたします。それから8号が体幹、いわゆる幹になにがしかの障害がありましたら、これを対象にいたします。それから9号からが、昭和38年から変わったところでありまして、くわしくは後ほど砂原、笠松両先生からお願いがあることになっています。ここではじめて、対象を疾患名で限定してあります。〈注 昭和41年法律第92号で全ての障害が給付の対象にとり入れられたため、その表現は、現行別表上はみられない。〉結核性疾患によって身体障害があるときに対象にいたしましょう。となっているわけであります。が、この際呼吸器に関しては、非結核性のもので、呼吸器の機能の障害があるばあいも、対象となるといっているわけであります。10号が精神の輝害、そしてこのうも、昭和40年8月からは精神薄弱も対象となることになっているわけであります。〈注 昭和40年法律第93号によって対象にとり入れられた。〉それから11号がそれぞれいままであげました「対象となる障害」が、そのものずばりでは量的に1級にならないが、何がしかの程度が重なって1級の量をしめていましたらとりあげましょう。ということをいっているわけであります。
 それから2級のなかに1級で対象とするもの以外に、またいろんなことをいっておりまして、1級にない対象がはいっていますが、まず2級の3号で平衛機能障害をも対象にしましょう。4号で咀嚼機能障害も対象としましょう、それから5号で音声または言語の障害もやっぱり対象にいたします、といっているわけであります。
 これを要約しますと、結核性疾患以外は、原傷病が対象を規定するものではなく、状態、機能障害が対象になるということであります。
法別表が定める障害の「量」ということ
 次に量的なことにうつりますが、この根本になりますのは、1級は障害が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のときであります。それから2級は障害が日常生活が著しい制限をうけるか、または日常生活に著しい制限を加えるということを必要とする程度のときであります。このような量的なしばり方は生化学的検査、病理学的検査などの定性、定量検査をもととしての病気の診断になれておられます各先生方には、きわめておかしいような感じでうけとられるかるしれませんし、またきわめて大ざっぱではないか、と感じられるかもしれません、事実、人間の身体の状態を、このような「別表方式」で把握しようとすることには、科学的という面からは問題があるようですが、いわゆる医学的ないろんな障害に、こんどは行政的にいろんな支えをしようというときに、どうしてもこういう形になっていくのが、従来の慣習のようであります。たとえば厚生年金のばあいは、中には経験がおありの先生もおいでかもしれませんが、「労働することが不能で、かつ、介護が必要である」というのが1級、 『労働することが不能」というのが2級、「労働に著しい制限がある」というのが3級。という量的区分が行なわれています。こういうふうに、どうしても行政面に医学的な身体障害の質的、量的判定をのせてくるときは、こういう言葉にならざるを得ないのかとも思われます。まあ将来は「障害認定」というものはまた違う形になるかもしれませんが、いや、違う形でもっと科学的に、実態に即したものにしなくてはならないのですが、現在のところでは、そういうふうになっています。ちょっと横道にそれましたが、こういうように1級の障害は、日常生活の用を介ずることが不能である程度の障害ですが、障害の質が、いわゆる視覚障害のときは、それにみあうものとして両眼の視力の和が0.04以下にしかみえないものが1級、これはすなわち眼科学的には社会的盲という段階で、一応これを目常生活の用を弁ずることが不能である程度と約束するというふうに、別表はなっているわけであります。
聴力のばあいは、日常出活の用を弁ずることが不能であるという程度は、すなわち、両耳の聴力損失が90デシベル以上、実態からいえばカナツンボの状態なのだと約束するということをいっているのであります。いま別表をずっと見渡しましても、日常生活の用を弁ずることが不能である程度1級、もしくは日常生活が著しい制限を受けるか、蓄しい制限を加えることが必要である程度2級が、数的に示されているのは、この視力障書と聴力障害だけです。肢体不自由では、部位、たとえば両上肢に著しい障害があるものとか、両下肢の足関節以上を欠くものとかいう表現になっており、一定部位が著しく障害されるという量の障害、一定部位が一定度以上欠損しているという量の障害で、年金支給がきめられているわけです。それから結核性疾患(9号)と精神の障害(10号)では、病状をふく必た機能の障害が「日常生活の用を弁ずることが不能である程度」では1級とか、「日常生活が著しい制限をうけける程度」では2級という言葉になっているわけです。この結核性疾患(9号)精神障害(10号)は、新たに設けられた項目でもありますし、くわしく認定器準というものを定めて、全国的に凹凸がないようにしたいというような作業が必要になってまいりまして、わざわざ砂原先生、笠松先生のご足労をお願いしなければならないことになったというわ分であります。
診断書の数字が決定的な価領をもつ
 では、別表に数約に表現されています。両眼の視力の和が0.041以下のものというときの0.04という数字は、どういう運命をもつ数字かと申しますと。両眼の視力の和が0.05になりましたら、ただちに2級となってしまうという運命をもつのであります。人間のからだの状態は、そのように割り切れるかといえば、そうとうに疑問があると思いますが、わが国の別表というものは、いわゆる1級もしくは2級の最低線を決めているということになっているのでありますから、非常に冷酷な運命をもっているといわぎるを得ません。
 そこで、別表で0.04以下が1級でありますので、たとえば、後天的な視力障害で感の悪い人で、日常生活が独りでできないばあいであっても、提出された診断書に両眼の視力の和が0.05と書いてありまして、この診断書がいわゆる正式につくられた診断書でありましたら、日常生活の状態とはかけはなれて、やはりどう見ても2級とせざるを得ないということになります。その逆のばあいるあるわけで、先天的な視力障害で、感もよくて日常生活は比較的にうまくできても、診断書に0.04と書いてありましたら、1級と認定することにもなります。それから両耳の聴力損失が90デシベル以上のものが1級であるとされていますので、もし両耳の聴力損失が89デシベルであったといたしましたら、これはやはりどうしても1級にしえない、診断書にそうでてしまったら1級にしえない、という運命をもつものであります。これにはいろんな問題がございまして厚生省にあります社会保険審査会で、いつも苦慮しているところでありますが、現行法での別表とは、そのようなものなので、そういうふうな価値をもつ数字であると、ご解釈、ご承知願って、視力、聴力障害の判定を考えていただきます。むしろ診断書で、実態と診断書がおおきくくいちがったばあいには、診断を新たにして、診断書からあらためていく必要が生じます。
抽象的な基準をどう具体化するか
 このほかのところでは、著しい障害という抽象的な言葉がはいっています。別表で0.04以下とか90デシベル以上と、きわめて明確に数字であらわされている後に、抽象的表現の項目がくるので、ちょっとおかしい気がしますが、まあこれはこういうふうにしか処理できなかったのであろうと思われます。肢体不自由の方では、著しいというように抽象的な言葉に対して、いわゆるそこでそれをさらに補足する意味で、映画というもので確実に認定していこうと、努力をしているわけであります。元来、認定事務、認定業務は、あくまで基本となるのは医師の診断書ということでございますので、その診断書がなくて映画だけあって、それで認定するということは、事務取扱上できないことになっております。目、耳のところでは数字ででることになっていますので、たとえば、0.04の人が自転車にのっていた、90デジベル以上の人が電話の応対をしていた、そのような日常生活の実態は、たしかにその数字から予想される日常生活とくいちがいがあるので、チェックする材料になりますが、夜、両眼視力の和が0.04以下に悪い人が自転車にのっている写真を、フラッシュをたいてとってそれでどうこうということはできない相談になっています。ですから、視カ1級の人が夜自転車に乗っているような事実がありましたら、当人の視力を確認していかねばなりませんが、そのばあいには、今度はあらたな診断書をとっていくというかたちで、確認していくということになります。

 肢体不自由の方は、著しい機能障害というふうになって、著しい機能という考えがいろいろわかれています。それで映画をいろいろとって、そこでどうしても全国的に目を一定の線にならすことが必要であると思いまして、今日8ミリで肢体不自由関係で審査事件にのぼりましたものを、お示ししょうと思います。ここで今からおしめしいたします映画といいますのは、たとえば、あたくしは年金をもらいたい、もらえるはずだということで、県に中請します。そうすると県の方では、でてきた診断書から、あなたはもらえないということで却下いたしますと、それに不服なばあいは国民年金法のばあいでは、各県(国民年金課)におられます審査官に、わたくしはやっばり1級だと思うということで、不服の申立てをいたします。そしてこんどは審査官(第1審)の段階で、あなたは1級ではありませんと棄却されますと、厚生省のなかの社会保険審査会(第2審)へ、不服の申立てができることになっています。それでそこにでてきますと、不服の申立をした人が原告であり、わたくしたちも行政庁が被告の立場になり、社会保険審査会の委員の先生方が裁判官のような立場で、いわゆる省内で裁判形式で審議が行なわれるわけで、そのときにいろいろなことで資料を要求されます、そのために県の方にご迷惑をかけて、映画をとっていただいたりしているわけです。その時の映画を編集したものであります。従来、映写機が各県にゆきわたりませんときには、日常生活動作検査表というふうなことをお示しいたしまして、点数であらわすようにいたしましたが、現在、映写機が各県にゆきわたったはずでありますので、審査会ににだす補足資料としては、肢体不自由関係は、映画によることにしていただき、社会保険庁の方へ送っていただきます。それを社会保険庁でみながら診断書を読んで、審査会で説明していくことにしたいと思っております。また、話が横にそれましたが、もう少し道草を喰わせていただきますと、昔は筆で書いておったが、ペンの発達とともにベンで書くようになり、印刷の発達とともに印刷になりというように、事務書類の発展段階をたどったものを廃疾認定にてらしあわせてみると、診断書というものから、肢体不自由等では可視的な映画というかたちにしていくのは、認定業務の発展的な過程ではないかと、個人的に思っているわけであります。

 そういうようなわけで、各県からいただきました映画を編集して、ここにもってまいりました。どういう点で1級と評価されたか、そういう映画を供覧いたしまして、いわゆる1級とおもわれるものはこういうものだ、2級とおもわれるものはこういうものだ、というようなある線を、今日えがいておかえりになっていただいたら、肢体不自由関係だけは、ある意味で全国的な一定の線でいけるようになるのではないかと思っているのです。先程も申しましたが、結核性疾患または精神障害については、午後から両先生からくわしくお話があると思います。

上下肢の著しい機能障害ということ

では両上肢または両下肢の著しい機能の障害というものは、どういうものかと、考えていくとにします、一側上肢または下肢の三大関節中、2大関節が筋力を喪失したり筋力が半減して可動範囲も半減したり、腕または膝関節が不良肢位といいますか、その上肢または下肢が使用できない位置一不良肢位または不便利肢位一に固定してしまったときに、その上肢または下肢が著しい機能障害をもっていると考えて、それが両方にあるもの、一側の上肢と下肢にあるものを、1級というように考えています。では、動作的にどういうことになるかと申しますと、上肢では、食事が独りでできない、衣服の着脱ができない、用便の処理ができない、というようなことになってきます。このさいこの基本的日常生活動作のどれかーつ、人手をかりなければできないばあいは、両上肢の著しい障害とみてよいと約束します。

 わたくしは良肢位不良肢位、便利肢位不便利肢位の判断は整形外科医として、その肢位を手術で改める必要を感じないときは、それを良肢位または便利肢位と考えるととにしており、このようなケースではその上肢または下肢の著しい障害とは考えないとしています。まだいろいろむずかしい問題もあるのですが、とにかく日常生活のうち、どれかが援助なしではできないというときは、両上肢の1級であるというように考えています。

 下肢の方では両下肢に障害があって、部屋の中でも壁づたいとか、机とかをつたって歩かなければ移動できない、部屋の中でも補助用具がなくては四つばいをしたり、いざって移動するより他に移動できない状態が、「両下肢の著しい障害」でこれを一級とする。それから両下肢の障害で部屋の中はそういうものを使わなくてもよいが、外にでたときは杖が必要だ、野外移動では補助用具が必要だという程度が2級と考えたらよいと思っています。一下肢障害で膝関節が80度もまがっているばあいには、その下肢は、まったく体重を支え得ませんので部屋のなかでも補助用具が必要になってきますが、これは一下肢の問題でありますので、一下肢の著しい障害、すなわち2級であります。切断したばあい、これは別表で1級では、上肢4号、下肢7号、2級では、上肢6号、9号、下肢10号、13号になるわけですが、指を欠くというのは、指のつけね、いわゆる中手骨指骨間関節又は中足骨指骨間関節から欠くものをいい、足関節以上で欠くものとは、足根骨を欠く切断というように考えます。

大きくかわった廃疾認定日

では、そのような廃族認定、むしろ今後は障害認定というべきでありましょうが…はいつするのかと申しますと、それは、厚生年金のばあいにならったもので、昭和39年8月に大きな変化をおこしています、従来は、症状が固定したときに廃疾認定をいたします、ということであったのですが、ところが、39年の8月から、「初めて医師にかかった日いわゆる初診日から3年間たちましたら、自動的に廃疾認定日がくる」ということになったわけです。いいかえればなおらないものでも廃疾認定してよい、というように変ったのであります。本来、廃疾という言葉のもつ意味は、そのような身体の状態の如何にかかわらず、一定の時間が経過して、しもまだ疾患が続いているというものに付していいのか、付せないとすれば廃疾という言葉を変える必要があると考えているのですが、従米では「できない」ものに年金を出しますということになっていたのに、39年8月から「してはいけない」という人にも出るようにかわったわけであります。例をカリエスにとってみますと、従来ならば、圧迫性脊髄炎でもおこして、カリエスも症状固定し、両下肢の麻痺が回復しないときに認定していたものが、今度は、初診日から3年目で、まだ安静横臥すべきであるというばあいも認定することになったわけです。
 このような制度には長と短所があるわけで、その短所については、41年度の大政正の時に大いに検討していこうという厚生省の考えですので、多分改正があると思います。なぜ3年目で廃疾認定するということに問題があるかと申しますと、第1に厚生年金にならったということに開題があると思います。厚生年金と国民年金の差は、厚生年金は被用者年金でございますので、雇われる時の身体状況の把握が適確であります、それから働いていますので、いつ病気になったというものの把握が、適確であります。どこから出勤簿に判をおしていないかということでも、調べられるので、初診が適確につかめるのであります。それからもう一つ、先天性の脳性麻痺とか、盲といった人々は、はじめから厚生年金の対象にならないという実態もあります。そういう障害者を雇う事業所は、まあ、ないからであります。
 国民年金のばあいには、地域年金といいます。たとえば市町村で農業や漁業で毎日自分で小さくかせいでいるという、そういう人たちを対象としていますので、20歳から国民年金にはいって、そのとき身体の状況はどうであるかわからないばあいが多いわけであります。体格検査をうけて国民年金制度に入るわけではありません。そういうことでいつ病気になったかわからない。非常に把握しにくい、それから先天性のものもいわゆる国民年金の障害福祉年金というものでみることになっています。廃疾認定日が、初診日から3年目にくるということは、結果として不公平を呼ぶことを多くします。しかも廃疾認定日はただの1日であって、その後に増悪したものは認めない態度では、「なおらない」症状のうごくものを認めながら、廃疾認定日では症状のうごくのを認めないという矛盾をふくんでいることになります。〈注 昭和41年法律第92号によって事後重症の制度がとり入れられ、この矛盾は解決された。>
 厚生年金創度が保険制度をとり、国民年金額度も保険制度をとっているからといって、それぞれの保険制度に入る人のバックグランドの相違を考えずに、認定制度を考えたことが混乱のもとになったわけです。そういうことで問題はありますけれど、とにかく39年の8月からは、病気になってはじめて医師にかかってから3年目で、廃疾認定をすることになっています。それで廃疾認定診断書で初診日というのは非常に大切になっていますので、先生片は他の臨床で非常にいそがしく、こういうことには興味がないかもしれませんが、記入の際には、また診断書をよまれるばあいには、十分にご注意ください。
進歩していく廃疾認定の考え方
 従来は、病気になった人は、なおるか死ぬかのどちらかだったのです。言葉はわるいですが、,いわゆるはん殺しの状態で生きるというケースはすくなかったのですが、それ等の人が医学の進歩で障害をもちながら生きのこるばあいがだんだんふえてきたわけで、それでいわゆる現在話題になっているリハビリテーションという問題も、非常にクローズアップされてきたのであります。しかし、そのリハビリテーションとうらはらに、リハビリテーションができない方には、なんらかの社会的な支えをしなくてはならないという問題が、また重要な社会問題になってきたのであります。
 リハビリテーションのうらはらにあるものが廃疾認定から申し上げていますように廃疾という言葉がいいかわるいか問題がありますが… …であろうかと思います。そういう意味でリハビリテーションが、医学的に重要視されるならば、障害の程度をはかるというものも、医学的に非常に大切ということになります。けれども従来はその必要性は行政面からうたわれただけでした。来将は、やっぱり社会医学的な面で廃疾認定をして、そして医学そのものだけでは、どこまでなおすことができてどこまでなおせなかった、というようなことを判定し、なおせなかった部分については、行政的な支えを要求するという態度が望ましいいのではないかと思います。個人的には、将来はこういう問題は、医学のなかで、そうとう重要な問題となってくるのではないかと思っているわけであります。すでに結核や精神でも、社会的治ゆという問題、欠損治ゆ者をどうするかという問題で、関係医師の方々はなやんできておられるはすであります。この面の社会的考察は、医学の大きな問題になるという、わたくしの予測があたるか、あたらないかは、これから10年間の状態がはっきりしてくれると、実は思っているわけです。試行錯誤といいますか、行ないつつ矛盾をあらためていくという態度は、必要なことですし、質疑応答のうち、また開題点がでてくれば、だんだん、より適当な方に考え方をまとめていきたいと思っています。


 廃疾認定講習会(405月開催)における東京大学教授笠松章氏の講演記録
はじめに
 先ほどから砂原先生や下河辺さんの話を聞いていますと、障害程度の判定ということが、いかに難しいかということがわかります。外部障害でも、結核でも、難しいとすると、精神障害のような、患者の側からいっても、判定する側からいっても、その根拠が主観的にならざるをえないものを、いったい判定ができるのかどうか、自信がなくなるような気がします。
 結核であれば、X線所見や菌の状態などによって、外部障害であれば、形にあらわれたもの、あるいは筋力というようなもので、数字であらわしたりすることもでき、何かチェックするものがあるのですが、精神障害はチェックするものが何もないのです。「肺結核の話ですれば、初めから安静度というようなものばかりで始めなくてはならないのです。しかし、悲観的なことを申しましたが、やっぱり、これはどうしてもやらなければならないことと、わたくしは考えるのでございます。
 今までの廃疾という言葉では、まず医療があって、それが行くところまで行ってしまって打切られる場合がこれで、木に竹をつぐ、こういう考えだと思うのです。しかし、そうではなくて、医療は医療でいつまでも続いていて、そしてある時期(それは今のところ、3年ということになっています。これについては、いろいろ矛盾を生むことは、話にでると思いますが。)になると、そこで、ここでいう生活保障である年金が始まってくる。この二つは両立してもいいものだというようなことが、はっきりしてきました。
 この考え、すなわち医療保障と生活保障が両立するという考え方にも反対があり(わたくしも一部同感するところがあるんですが)、たとえば、精神障害などは、どんどん医療機関をふやして、医療を進めていけば、生活保障などは、いらないのではないかなどという考え方です。ところがこれがなかなか拡大しないのが現状です。医療保障はご承知のように、医療側と支払い側が紛争をおこし、これが拡大しない原因の一部となっています。それから、この前のライシャワー大使事件を契機としておこった精神衛生法の改正のときにも、精神障害者医療を拡大しようとしますと、医学における他の科と衝突するような面もでてきます。精神科だけ拡げるわけにはいかないというわけです。
 さて、結核なんかでもそうでしょうが、慢性の障害を永く続けて治療していますと、その患者の家庭生活をおびやかされることは当然です。そういう生活を医療とは別に保障するということは、福祉国家としては当然のことです。それを医療の枠内だけでやることは、前にのべたような理由で非常にむずかしいことだと思うのです。傷病手当金というようなものが医療の枠内にあり、これを増していけばよいという考えもありますが、これもでるところが違うから、今の日本のような医療制度だと、生活保障制度の方からすすめる方が、患者のために有利になるのではないかと思うのです。そう思うと、国民年金に、精神障害の認定がむずかしいからといって乗りおくれてはならないというような気がするわけです。
 もう一つ、今のところ福祉年金は1級ですし、拠出制の国民年金での障害年金は1級、2級だけですけれども、これで満足しているわけでなく、3級、4級にだんだん拡大していくことを期待しています。最近、われわれの専門領域である精神医学の進歩によって、精神障害者が何かの欠陥をもちながらも、社会復帰ができるという見込がだんだんついてきました。わずかのハンディ・キャップ、たとえば、20%のそれをもって社会復帰するなら、その分だけの障害保障を得て、残りの80%はフルに利用して活躍することができるなら、まことにけっこうです。この欠陥分だけを国民年金で保障してもらえば、一般健康人と互して社会で働いていけるわけですから、将来の見通しがでてくることになります。精神障害の認定にいろいろ困難があっても、非常に大切なことだと思うようになり、日本精神神経学会の方にも、この専門委員会をつくって検討することになっています。
認定基準作成の根本的な考え方
 さて、この精神障害を外部障害や結核のように、国民年金の対象として基準を作ろうとすると、まえから述べているように、まことに困難で、ときには矛盾がでてきて収拾がつかなくなるというようなところがあります。そこで、われわれの方では、次のような方針でのぞんだのであります。
 ここに、国民年金法の別表にございます1級の状態として,、両眼の視力の和が0.04以下のもの、両耳の聴力損失が90デッベル以上のもの、それから外部障害として、四肢の障害をあげております。
 これを読むと日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる状態が、頭のなかに浮ぶわけです。それと相応するような類似な精神障害は、どんなものかと考えるという方針です。それから2級でも同じことで、両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のものと、以下日常生活が著しく制限される状態を書いてありますが、こういうものを頭のなかで考えてくださいというわけです。診断書を書く人、あるいは、これを判定される皆さん方の主観的判断が非常に大きくなりますが、これにたよるよりほかに方法がないだろうというようなところで出発したわけです。
 そのかわり、その認定診断書を書く人を限定しています。外部障害でも、結核の方でも、国民年金の診断書は、医者ならだれでも書けるようになっているのですが、精神障害に関しては、専門家でなければ書けないということにしたのです。精神衛生法で規定された精神鑑定医とその他いわゆる専門医(この専門医というのは、医師法にはないのですから、作っても作らなくても同じだという意見もありますが)だけが書くことができる、すなわち、書く医師の側を少し規制することによって、主観性にたよらざるをえないところを、少しカバーしようとしたのであります。
社会医学的な診断書が必要
 つぎに、お手元にある内部障害認定事例集について申しあげます。これはいろいろの問題点をあげたもので、まず第1は、廃疾認定診断書は狭い意味の医学的診断書でなく、社会医学的な診断書であるということです。これが書かれる方にあまり理解されていないのではないかと思います。わたくしは別のところにも書きましたが、現代の医学では、好むと好まざるとにかかわらず、第1の診断と第2の診断が必要になってきました。第1の診断というのは、純医学的な症状を把握し、できればその原因までわかって、病気を完全に治ゆするための治療方針まで指示するような病名をつける。ついで、完全治ゆを目指して治療を行う、この出発点になるのが普通の意味の医学の診断です。
 ところが、これだけでは、医者のつとめはおわらなくなります。すなわち、死ぬか、治るかの間に、何かの欠陥を残して治るという症例が、医学の進歩によって、精神医学ばかりでなく臨床医学一般に、だんだん多くなりつつあるのが現状です。第2の診断というのは、この欠陥を残して治った状態に対して行われるもので、純医学的には、症状固定の時期をつかまえ、その欠損の程度を社会的に判定するためのものです。欠損の程度はその人が人間として生きてゆくのに、どれだけの短所をもっているかということですが、全社会生活とまではいわなくても、もっと基礎的な日常生活の上で、どれだけの欠損をもっているかということを、判断しなくてはなりません。これがわたくしのいう医学の第2の診断ですが、前の方を医学の治療医学的診断とすれば、第2の方は社会医学的な診断だといえるわけです。障害年金の診断書には「日常生活にどれくらい障害を及ぼしているかが記入されているか」ということが非常に大切なわけです。ところが、だされた廃疾認定診断書には第1の診断とごっちゃになったような診断書が多いのです。たとえば、「妄想」は、精神医学の診断では、もちろん非常に大事なことですが、しかし、この診断では妄想の有無、妄想の内容を書くことがたいせつでしょう。たとえば被害妄想があって、特定の相手に非常に敵意をもっていて、ほっておくと何をするかわからないというような場合は、日常生活に影響が多い。「妄想」があってる他に影響を及ぼすことが少ない場合であれば、この第2の診断では重要な意味をもってこないわけです。要するにこの診断書では、その症状によって、日常生活にどんな影響があるかということを強調して書いてもらわなくてはならないのに、そういう点が、ねん入りに書いていないということに気がつきました。その他、現症欄に単に精神能力水準の低下、不潔症状とだけ書いてあります。しかし、この精神能力に低下があるために、何ができないかということを、具体的に書かなけれは意味がなくなります。不潔症状といっても、そのため大小便を附近へまきちらすような不潔症状か、われわれでもやるように1週間でも2週間でも風呂に入らなくても平気だというような不潔症状か、日常生活に具体的な内容として、それがどう現われているかということが、この診断書の決め手であるということです。この点、診断書という名前がついているために、ふつうの第1の医学的診断のような記載が、非常に多いということに気がつきました。このままでは、なんとも判断できないから、もう少しこういう点をくわしく書いてくださいと頼むようなことになると思います。



生活保障のための診断書
 それから、「もう一つ大事なことは、これは医療保障のための診断書ではなくて、生活保障のための診断書であるということです。しかし、1級程度の重症なものは、大多数がおそらく入院していると思われます。描置入院だとか、生活保護だとか、いろいろの形で医療保障の下にあると思います。医療機関のなかに入院している場合、閉鎖病棟にいるか、開放病棟にいるか、どの程度の看護、たとえば食事を食べさせてやらなければいけないかどうかということも大事だが、それだけですみません。それよりも生活保障であるかぎり、家庭へかえしてみて、そして、どんな生活ができるだろうかと、頭のなかだけで考えた上での判定が必要なのです。
 しかも、家庭へかえすといっても、その人の家庭そのものでなく、日本の平均的家庭を考えなくてはなりません。経済的に恵まれていて、できることでも家人がめんどうをみる、そんな家庭ではないのです。逆に貧困な家庭で、できないことまでしなくてはならない家庭もないのです。日本の平均的な家庭へかえしてみたら、どういう生活ができるか、ということに考えなおしてみなくてはならなくなります。医療保障なら病院内でどんな状態にあるかということが問題ですが、生活保障ですからとにかく一度、家庭にかえしてみて(もちろん頭のなかでですが)どんな状態になるかということを考えてみなければ、本当の判定がでてこないのではないかと思います。
 そうロではいっても、非常にむずかしいことだということは、わたくしもよくわかります。現に患者は病院の中に入っていて生活をしているのですから。しかし、原則的には平均的な日本の一個人が平均的な家庭へかえって、さてその人に、どれだけ生活能力があるかということから、基準がでてくると思うのです。そういう点が、今後、この国民年金の福祉年金に精薄が入ってくると、十分考えておかなければならない点だと思います。
 しかし、その次の操作としては、平均的な家庭生活での生活能力の欠損が、逆に病院へ連れもどってきた場合、病院内でどんな生活ができるだろうかということから、基準をつくることも可能かと思います。将来の問題としては、結局、病院内での生活から、この程度は1級だとか、2級だとか、基準ができれば一番よいわけです。しかし、原則的には生活保障ですから、病院内という特別な医療機関内での生活能力でなくて、社会人としての生活能力を、頭において診断書を書かなくてはならないことにかわりはないと思います。
精神障害としてふくまれるもの
 今までのべたところで、わかっていただけたと思いますが、要するにこの診断書は、社会医学的な診断ですから、まず精神科の専門家でなくては書けないと考え、書く医師に制限をつけたのです。それから、社会医学的な所見ですから、病院内だけでなく、平均的な家庭にかえった場場合に、その人が日常生活にどんな障害があるかということが問題です。
 そこで、もう少し具体的に申しますと、認定基準によりますと、精神障害であって、前号と同程度以上と認められる程度、すなわち1級は、「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめている程度」、2級は「日常生活に著しい制限をうけるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」ということになります。それにはどういう疾患があるかと申しますと、分裂病とそううつ病、非定型精神病、てんかん、中毒精神病、器質精神病、最後に新しく精神薄弱が加わることになりました。 
 改正前の別表ですと、精神障害のなかで、精神病質、神経症と精神薄弱をのぞいていましたが、こんどは、精神障害者は一応全部対象になることになります。しかし、精神病質と神経症については、原則的には別表に定める程度の障書に該当しないのです。なぜかというと、精神病質は原則的には日常生活の用を井じることを不能ならしめるような、あるいは制限を加えるような状況にはないからです。また、神経症も、原則的に治療可能ですから、このような状況にはならないと考えているわけです。これは原則的ですから、それでは例外的には、どういうことがあり得るかということになりますと、精神病質については、例外みたいなものもないと思います。神経症については非常に長く続く強迫神経症などで、まれには2級程度のものがあり得るかも知れません。しかし、これも原則的には、治る可能性があるわけですから、あまり対象にしない方がいいと思われます。とくに神経症で生活保障をしますと、病気のなかにかくれてしまって、自分で治す意欲がなくなってきて、患者のためにならないといってもよいと思います。したがって、神経症と精神病質は、事実上のぞいてしまうことになると思います。

精神分裂病の判定基準と「適当な介護」のもつ意味
 精神障害の対象となる疾患として、精神分裂病がまず該当すると思います。認定基準によると「高度の欠陥状態のため、高度の人格の崩壊、思考障害、その他妄想、幻覚等の異常体験があり、適当な介護がなければ、日常生活の用を弁ずることが不能である程度のもの」となっています。
 問題はこの適当な介護がなければということであります。少し拡大して解釈しますと、分裂病は全部これに入ってしまうことになりましょう。分裂病で入院している患者の多くは、家庭的にも社会的にも何か問題行動があるから入院しているので、入院を介護のためとすると、分裂病による精神障害者は全部入ってしまうということになります。しかし、日常生活(この場合は病院内での日常生活)という面からみると、精神病院に入っている患者のうちで、基本的生活能力や自己の保全能力を失っている者は、そんなに多くありません。「事例集」の初めに書いてありますが、
A   日常生活の基本的生活能力というのは、ア食事が独りでできるかイ用便(女性なら月経)の始末が独りでできるかウ入浴、洗面、下着の交換はどうかその他、日常生活の基本的起居が独りでできるか、というエことです。
B   日常生活における自己の保全能力とは、ア 食物の適否がわかるか イ 刃物、機械、火などの危険がわかるか ウ 危険な場所がわかるか エ 日常生活における昼夜その他、時間的区別ができるか オ 天候、気候に適応できるか、ということです。
 しかし、前からくりかえしのべているように、この保障は生活保障ですから、病院内で、これらの日常生活の能力に障害がなくても、平均的家庭環境で、これに障害のおこることが推測される場合、当然1級あるいは2級に該当することになります。
 また、認定基準に書いてある分裂症状の高度の人格崩壊、思考障害、その他
異常体験のため、日常生活がある程度できても、閉鎖病棟に入れて常時注意していなければ、何時外へ出ていくかわからない。外へ出て店先に並んでいるものを持ってくるとか、帰り道がわからなくて、他人の世話になる分裂病患者が、病院内でこんな状態に常時あるとすると、この患者を平均的家庭環境にもどすと、自己の保全能力に障害があることになりますから、その程度により、この障害保障の対象になってよいと思います。
 また、陳旧分裂病患者にみられることですが、たとえ開放病棟にいても、呼んでこなければ、常時食事にも出てこないというようであれば、平均的家庭環境で、先ほど述べた基本的生活能力に、障害が多少とも出てくると考えてよいでしょうから、これも程度によって問題になると思います。
 要するに、国民年金法別表のはじめの方にある外部障害で用便、食事などのめんどうをみる介護と、精神障害の場合の介護とは、多少質が異なってくるわけで、その介護の範囲をもう少しひろげてもいいと思います。誰かが注意していなければ、とんでもないことになってしまうという状態に患者が常時ある、そのくらいが精神障害の介護であっていいと思います。
 ここで精神衛生法第29条のいわゆる自傷他害のおそれによる措置入院との関係が問題になります。これは、自傷については患者の保護のために、他害については社会的危険の防止のために、医療の枠内で措置しようとするのですから、生活保障の国民年金とは、原則的に法律の趣旨がちがっているといってよいと思います。
 しかし、自傷の危険が発病以来3年以上たって、常時つづいているのならば(こんなことは次のうつ病にはあっても精神分裂病では珍らしいが)、まえに述べた自己保全能力に障害があるので、その程度に応じて生活保障としての障害年金の対象としてよいであろうと思われます。他害については、一応患者自身の生活能力とは別に考え、精神衛生法の措置入院として医療保障の対象とすべきであります。

その他の精神疾患の判定基準
 次は、そううつ病ですが、この病気は原則的には、わるい期間(病相期)がくりかえされますが、よい時期には発病前の状態にまで良くなるものですから、年金の対象になることは、分裂病ほど多くないと思います。ただ、1病相期が異様にながびいたり、または短くともひんばんに繰り返したりしますと、問題になることはあると思います。その認定基準は、だいたい分裂病と同じです。
 非定型精神病というのは、そううつ病とも分裂病とも、診断を確定できないような症例に、こんな診断名をつけることがあるから、とくにこれを入れておいたのです。これも分裂病とそううつ病と同じように考えてよいと思います。
 てんかんについては、認定基準に、「頻繁に繰り返す発作又は高度の痴果、性格変化その他精神神経症状があり、適当な介護がなければ、日常生活の用を弁ずることが不能である程度のもの」ということになっています。これも何回の発作があれば、それに該当するかというようなことになると、何も決まっていないのです。
 しかし、そんな発作回数で決めるより、全体を総合して、その患者の基本的生活能力あるいは自己保全能力などの点から、別表にかかげた外部障害とアナローグに、どの程度の障害かと考えていただく方が、本当の判定ができると思います。なお、そのほかに重なってくる精神症状については、分裂病と同じように考えてもらえばいいと思います。
 中毒および器質精神病についても同じで、認定基準には「高度の痴果、性格変化及びその他の持続する異常体験があり、適当な介護がなければ日常生活の用を弁ずることが不能である程度のもの」あるいは「高度の痴果、人格崩壊、その他精神神経症状があり、適当な介護がなければ、日常生活の用を弁ずることが不能である程度のもの」となっていますから、前にいったような条件さえ満せば、1級、2級になりうると思います。

精神薄弱の判定基準
 最後に、精神薄弱であります。これまで国民年金の内部障害である精神障害からカッコ書で除かれていたのは、ご承知のことであります。この法律ができる当時から、わたくしたちは精神簿弱が除かれては、この法律は骨抜きになってしまったようなものだから、ぜひ入れていただきたいとくりかえし主張してきたのです。しかし精神障害の取り入れられた同じ年に、重度精神薄弱児扶養手当法〈注昭和41年法律第128号により特別児童扶養手当法となった。>が並行して制定されたので、こんな結果になったのです。当時は、20歳以上の精神薄弱者には、脳炎後遺症などとして、器質精神病の痴呆の方に入れるよりしかたがないと考えていたのです。今回、はっきりと内部障害の中に取り入れられ、骨抜きにならずにすむわけです。
 この精神薄弱障害認定基準は「精神能力の全般的発達に高度の遅滞があり、適当な介護がなければ、日常生活の用を弁ずることが不能である程度のもの」となっていますから、他の精神障害、とくに器質精神病や精神分裂病と同様に考えていただければけっこうです。
 ところで、重度精神薄弱児手当法における精薄児の障害程度を判定するためには、児童相談所において診断書を作成するのに、医師が臨床心理判定員等の協力を得て行うことになっています。しかし、国民年金法においては、その他の障害認定と同様に、精神科の専門医がやるということになっています。
 精神薄弱の診断には、知能指数または知能年齢も必要です。しかし大人の精神薄弱者は、よほどの白痴でなければ、ある程度まで生活能力のあるのが普通です。家庭内でも多少の手助けぐらいできる場合が多いですから、知能指数が何点以下であるからというようなことだけで、判定基準にならないのです。やはり実際の生活能カー平均的な家庭環境、社会環境の中でのその人間の能力を総合的に判定してもらいたいと思います。知能指数だけにあまりこだわることはないと思います。
 次にこの精神薄弱を取り入れたのを機会に、診断書の様式の一部が改正されました。これは精神薄弱ばかりでなく、精神障害一般について、今までわたくしの申しあげたような点で、いくらかでも書きやすくなるように考えたのであります。

平均的生活環境でどれだけの生活ができるかということ
 今までいろいろわたくしの申し上げたところで、一番大事なことは、次の点だと思います。ここで要求される障害年金の診断書は、医療保障と両立する生活保障として、その人間が平均的な生活環境におかれたとき、病気の故に生活能力にどれだけの支障をきたすかということが、原則的には判定の基礎になります。しかし、実際問題として、1級とか2級とかに該当する場合は、おそらく大多数が入院しているということが想像されます。そこで、医療保障でなくて生活保障ですから、一般平均的、家庭、社会環境における生活状況を病院内の生活状況に、あるいはその逆に翻訳してみることが必要になります。それがどんなものになるかということは、わたくしたちも実のところはっきりわからないのです。皆さんとともに研究して、使用可能な基準ができれば、非常にけっこうなことだと思います。これがわったくしの言いました精神医学における第2の診断ですから、精神医学会の問題であるともいえます。

身体障害者手帳等級と障害年金等級との関係

 身体障害者手帳に記載されている等級と障害年金等級との関係について、下記のとおり表してみました。但し、これはあくまで目安ですので、参考にして下さい。

       【上部「障害程度等級表」をクリックし、画面下部に表示されているエクセル

    ファイルを開いてください。エクセルファイル画面下部に表示されている、

    該当障害をクリックして選択のうえ、ご参照ください。】

身体障害者障害程度等級表

NO,1  

等級 視覚障害 聴覚又は平衡機能の障害 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
聴覚障害 平衡機能障害
1級 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、きょう正視について測ったものをいう。以下同じ。)の和が0.01以下のもの      
2級 1 両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)    
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの      
3級 1 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの) 平衡機能の極めて著しい障害 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の喪失
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの   音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
4級 1 両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの 1 両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話後を理解し得ないもの)    
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの 2 両耳による普通和声の最良の話音明瞭度が50%以下のもの    
5級 1 両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの   平衡機能の著しい障害  
2 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの      
6級 一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので両眼の視力の和が0.2を超えるもの 1 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話後が理解し得ないもの    
2 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの    
【注】 公的年金制度における障害等級に置き換えた場合、  の部分は1級相当、  の部分は2級相当、  の部分は3級相当。ただし、あくまで目安です。



NO,2―1  

等級 肢体不自由〈上肢) 肢体不自由〈下肢)
1級 1 両上肢の機能を全廃したもの 1 両下肢の機能を全廃したもの
2 両上肢を手関節以上で欠くもの 2 両下肢の大腿を2分の1以上で欠くもの
2級 1 両上肢の機能の著しい障害 1 両上肢の機能の著しい障害
2 両上肢の全ての指を欠くもの 2 両下肢の下腿の2分の1以上で欠くもの
3 一上肢を上腕の2分の1以上で欠くもの  
4 一上肢の機能を全廃したもの  
3級 1 両上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの 1 両下肢をショパール関節以上で欠くもの
2 両上肢のおや指及びひとさし指の機能を全廃したもの 2 一下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの
3 一上肢の機能の著しい障害 3 一下肢の機能を全廃したもの
4 一上肢の全ての指を欠くもの  
5 一上肢の全ての指の機能を全廃したもの  
4級 1 両上肢のおや指を欠くもの 1 両下肢の全ての指を欠くもの
2 両上肢のおや指及びの機能を全廃したもの 2 両下肢の全ての指の機能を全廃したもの
3 一上肢の肩関節、肘関節又は手関節の内、
いずれか一関節の機能を全廃したもの
3 一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの
4 一上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの 4 一下肢の機能の著しい障害
5 一上肢ののおや指及びひとさし指の機能を全廃したもの 5一下肢の股関節又は膝関節の機能を全廃したもの
6 おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指を欠くもの 6 一下肢が健側に比して10センチメートル以上
又は健側の長さの10分の1以上短いもの
7 おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指を全廃したもの  
8 おや指又はひとさし指を含めて一上肢の四指の機能の著しい障害  
5級 1 両上肢のおや指及びの機能の著しい障害 1 一下肢の股関節又は膝関節の機能の著しい障害
2 一上肢の肩関節、肘関節又は手関節の内、
いずれか一関節の機能の著しい障害
2 一下肢の足関節の機能を全廃したもの
3 一上肢のおや指を欠くもの 3 一下肢の健側に比して5センチメートル以上
又は健側の長さの15分の1以上短いもの
4 一上肢のおや指の機能を全廃したもの  
5 一上肢のおや指及びひとさし指の機能の著しい障害  
6 おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指の機能の著しい障害  

NO、2―2  

等級 肢体不自由〈上肢) 肢体不自由〈下肢)
6級 1 一上肢のおや指の機能の著しい障害 1 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
2 ひとさし指を含めて一上肢の二指を欠くもの 2 一下肢の足関節の機能の著しい障害
3 ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能を全廃したもの  
7級 1 一上肢の機能の軽度の障害 1 一下肢のすべての指の機能の著しい障害
2 一上肢の肩関節、肘関節又は手関節の内、
いずれか一関節の機能の軽度の障害
2 一下肢の機能の軽度の障害
3 一上肢の手指の機能の軽度の障害 3 一下肢の股関節、肘関節又は足関節のうち、
いずれか一関節の機能の軽度の障害
4 ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能の著しい障害 4 一下肢のすべての指を欠くもの
5 一上肢のなか指、くすり指及び小指を欠くもの 5 一下肢のすべての指の機能を全廃したもの
6 一上肢のなか指、くすり指及び小指の機能を全廃したもの 6 一下肢が健側に比して3センチメートル以上
又は健側の長さの20分の1以上短いもの
【注】 公的年金制度における障害等級に置き換えた場合、  の部分は1級相当、  の部分は2級相当、  の部分は3級相当。ただし、あくまで目安です。



NO,3  

等級 肢体不自由(体幹) 肢体不自由(乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害)
上肢機能 移動機能
1級 体幹の機能障害により座っていることができないもの 不随意運動・失調等により上肢を使用する日常生活動作がほとんど不可能なもの 不随意運動・失調により歩行が不可能なもの
2級 1 体幹の機能障害により坐位又は起立位を保つことが困難なもの 不随意運動・失調等により上肢を使用する日常生活動作が極度に制限されるもの 不随意運動・失調により歩行が極度に制限されるもの
2 体幹の機能障害により立ち上がることが困難なもの
3級 体幹の機能障害により歩行が困難なもの 不随意運動・失調等により上肢を使用する日常生活動作が著しく制限されるもの 不随意運動・失調等により歩行が家庭内での日常生活活動に制限されるもの
4級   不随意運動・失調等による上肢の機能障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの 不随意運動・失調等により社会での日常生活活動著しく制限されるもの
5級 体幹の機能の著しい障害 不随意運動・失調等による上肢の機能障害により社会での日常生活活動に支障があるもの 不随意運動・失調等により社会での日常生活活動に支障のあるもの
6級   不随意運動・失調等により上肢の機能の劣るもの 不随意運動・失調等により移動機能の劣るもの
7級   上肢に不随意運動・失調等を有するもの 下肢に不随意運動・失調等を有するもの
【注】 公的年金制度における障害等級に置き換えた場合、  の部分は1級相当、  の部分は2級相当、  の部分は3級相当。ただし、あくまで目安です。



NO,4  

等級 心臓の機能の障害 じん臓の機能の障害 呼吸器の機能の障害
1級 心臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 呼吸器の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
2級      
3級 心臓の機能の障害により家庭内での日常生活が著しく制限されるもの じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活が著しく制限されるもの 呼吸器の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
4級 心臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの 呼吸器の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
5級      
6級      
【注】 公的年金制度における障害等級に置き換えた場合、  の部分は1級相当、  の部分は2級相当、  の部分は3級相当。ただし、あくまで目安です。



NO,5  

等級 ぼうこう、直腸の機能の障害 小腸の機能の障害 免疫の機能の障害
1級 ぼうこう又は直腸の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 小腸の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 免疫の機能の障害により日常生活活動がほとんど不可能なもの
2級      
3級 ぼうこう又は直腸の機能の障害により家庭内での日常生活が著しく制限されるもの 小腸の機能の障害により家庭内での日常生活が著しく制限されるもの 免疫の機能の障害により日常生活活動が著しく制限されるもの(社会での日常生活活動が著しく制限されるもの除く)
4級 ぼうこう又は直腸の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの 小腸の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの 免疫の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
5級      
6級      
【注】 公的年金制度における障害等級に置き換えた場合、  の部分は1級相当、  の部分は2級相当、  の部分は3級相当。ただし、あくまで目安です。



備考  

1 同一の等級について二つの重複する障害がある場合は、1級上の級とする。但し、二つの重複する障害が特に本表中指定せられているものは、該当級とする。
 
2 肢体不自由においては、7級に該当する障害が二つ以上重複する場合は、6級とする。
 
3 異なる等級について二つ以上の重複する障害がある場合については、障害の程度を勘案して、当該等級より上位の等級とすることができる。
 
4 「指を欠くもの」とは、おや指については指骨関節、その他の指については第一指骨関節以上を欠くものをいう。
 
5 「指の機能障害」とは、中手指関節以下の障害をいい、おや指については、対抗運動障害をも含むものとする。
 
6 上肢又は下肢欠損の断端の長さは、実用長(上肢においては腋窩より、大腿においては座骨結節の高さより計測したもの)をもって計測したものをいう。
 
7 下肢の長さは、前腸骨棘より内くるぶし下端までを計測したものをいう。

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